有機野菜との違いは?無農薬・減農薬野菜の分かりやすい説明
スーパーの陳列棚や野菜宅配の説明で見かけることが多い「有機」「減農薬」「無農薬」の表示。
どれも「安心・安全な野菜」というイメージがありますが、具体的にはどのような違いがあるのか知っていますか?
無農薬・減農薬野菜とは?
無農薬野菜や減農薬野菜は有機栽培には当てはまらないが、特別な栽培で生産された農産物(特別栽培農産物)の一つです。
特別栽培農産物は、生産物が生産された地域の慣行レベル※と比較して、節減対象農薬※の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培 された農産物を言います。
節減は栽培期間中に散布する除草剤、殺菌剤、殺虫剤だけではなく、植付け前の土壌消毒剤や種子消毒剤なども対象です。
節減対象農薬と化学肥料の両方の節減が必要で、節減対象農薬を使用しなかった場合は「節減対象農薬:栽培期間中不使用」という表示になります。
特別栽培農産物は「栽培」の言葉がポイント。
基本的に栽培中の農薬や化学肥料にしか言及しておらず、土壌の残留農薬などに関しては特に規定がありません。
対象になるのは未加工の野菜・果物や乾燥調製した穀類・豆類・茶など。
加工食品(野菜冷凍食品、乾燥野菜、カット野菜)、山野草、きのこなどは対象外です。
上記の基準は農林水産省が定めた特別栽培農産物表示ガイドライン(平成19年4月に改正)によるものです。
特別栽培農産物表示ガイドラインとは「農業の自然循環機能の維持増進を図る為に、農薬や科学肥料を使用しない農産物や、環境への負荷をできる限り低減して栽培された農産物や表示について、生産・流通・販売に関わる人々が守るべき基準」のこと。
【用語解説】
※慣行レベル:各地域で慣行的に行なわれている節減対象農薬や化学肥料の使用状況
※節減対象農薬:従来の化学合成農薬から「有機農産物のJAS規格で使用可能な農薬」を除外したもの。
具体的には、硫黄くん煙剤、硫黄粉剤、硫黄・大豆レシチン水和剤、硫黄・銅水和剤、食酢、水和硫黄剤、生石灰、性フェロモン剤、石灰硫黄合剤、炭酸水素ナトリウム水溶剤及び重要、炭酸水素ナトリウム・銅水和剤、銅水和剤、銅粉剤、二酸化炭素くん蒸剤、メタアルデヒド粒剤、硫酸銅、ワックス水和剤……を除いたもの。
ガイドラインでは「減農薬・無農薬」表示は禁止事項
良く見たり聞いたりする「減農薬野菜」「無農薬野菜」という表示。
実は特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」の表示は禁止事項になっています。
平成15年5月の改正前のガイドラインには「無農薬」の表示があり「農産物の生産過程などで、農薬を使用しない栽培で生産された農産物」を指していました。
ただし消費者は「土壌に残留した農薬や、周辺の圃場から飛散した農薬も含めて、一切の残留農薬を含まない農産物」と勘違いする人が少なくありませんでした。
実際に「無農薬栽培をしていても、残留農薬を含む野菜」は存在するので「無農薬だと思って買った野菜は、実は農薬が含まれていた」というのはありえます。
また「『無農薬は有機よりも良いものだ』と思っている人が6割以上存在する」という調査結果もあり、「無農薬表示」は消費者に正しい理解が得られにくいものでした。
減農薬に関しても「削減の比較対象になる基準が分かりにくい。削減割合や何が削減されれたのか不明確」という、消費者にとって分かりにくい表示になっていました。
その為、消費者に誤解を与えないように「無農薬」「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」の表示は禁止事項になった訳です。
ただし私たちのような消費者は「特別栽培農産物」と言われても、ピンと来ない人が多いのも事実。
「表示禁止」に関しての法的な義務は無いので、どのような農産物か分かりやすくする為に「無農薬」や「減農薬」という言葉が今も一般的に使われているのが現状です。
【参照】
特別栽培農産物に係る表示ガイドライン – 農林水産省
有機野菜との違いは?
やさしい有機野菜の説明で詳しく紹介していますが、有機野菜は「有機農産物(有機栽培された農産物)」に分類されます。
農林水産省が1992年に定めた「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」にて化学肥料や化学農薬の使用を避けて、収穫の2年以上(多年生の野菜は3年以上)前から堆肥などによる土づくりを行なった畑で栽培した農産物のこと。
有機(オーガニック)野菜には、有機JASマークが付けられているので、スーパーなどで有機JASマークを見かけたことも多いのではないでしょうか。
「有機栽培=無農薬」と思いがちですが、有機農産物に使える農薬や化学肥料もあるので、必ずしも無農薬とは限りません。
野菜を栽培して消費者に届ける為には、程度の差はありますが、農薬や化学肥料を使用するのも仕方が無い所がありますね。
安全な野菜を選ぶには?
「有機野菜と無農薬野菜、減農薬野菜はどれが安全か?危険なのか?」と問われると、生産者や産地、野菜によって、栽培環境や使用する農薬や化学肥料の程度などが異なるので「これが安全!」と断定するのは不可能です。
その為「安全な野菜」を食べるには、信頼できる生産者・産地を見つけることが重要になります。
スーパーや八百屋だと、どうしても選択肢が少ないのですが、有機野菜や減農薬野菜を販売する食材宅配サービス(らでぃっしゅぼーやや大地を守る会、ビオマルシェ)は、安心や食の安全にこだわりを持つ生産者が育てた野菜を取り扱っています。
各社のWebサイトを見てみると、生産者のプロフィールや栽培基準、産地、放射線物質検査の結果などが、詳しく記載されています。
「本当に安全な野菜が欲しいけど、一軒一軒地道に探すのは大変」という時は、有機野菜系の食材宅配サービスを利用してみてはいかがでしょうか。