農産物になぜ農薬が必要?安定した生産量を保つのに欠かせない5つの理由
農業には欠かせない農薬。
私たちが普段食べている野菜や果物、穀物などの農産物は多かれ少なかれ、農薬が使われています。
何となく「無農薬」のイメージがある有機栽培でも、何かしらの農薬が使用されている場合が多いです。
農薬に関しては「危険」「危ない」という漠然としたイメージがありますが、ではなぜ「危険」と言われる農薬が使われているのでしょうか?
▼こちらの記事も読まれています▼
– 食べても危険性はない?意外と知らない残留農薬の正しい知識まとめ
– 自宅で簡単にできる野菜・果物の残留農薬を落とす7通りの方法
– 知られざる有機野菜のメリット・デメリット
この記事の目次
農薬の必要性
- 生物多様性がなく、害虫が増えやすい
- 品種改良の結果、自身を守れなくなった
- 害虫も栄養価が高い畑や農作物が好き
- 農薬を使わないと作れない野菜・果物が多い
- 生産者の労働時間の短縮になる
生物多様性がなく、害虫が増えやすい
基本的に広い農耕地でも栽培される農作物は「1種類」だけ。
一面、トマト畑やキャベツ畑、茶畑が広がる風景を、実物やテレビなどで一度でも見たことはあると思います。
田畑を耕したり、雑草が抜かれたりすると、栽培する農作物以外の植物は排除されるので、どうしても植物相( その地域に生育する植物の全種類)が単純化されます。
田畑に生息する昆虫や微生物も「農作物を栄養源にする種類」だけしか残らないので、農作物を栽培する一帯は、どうしても害虫が発生しやすい環境になってしまいます。
また日本は雨が多く、高温多湿な寄稿なので、病害虫や雑草が他よりも発生しやすいという事情もあります。
品種改良の結果、自身を守れなくなった
私たちが食べているほどんどの農作物は、原種(品種改良以前の在来種のこと)から品種改良されたものです。
野菜本来が持つ辛味、苦味、渋味、エグ味などは、「美味しくない味がする」として食べられるのを防いだり、病原菌の攻撃から身を守ったりするのに必要不可欠なものです。
例えば「毒キノコ」や「じゃがいもの芽(ソラニン)」などは典型的な例ですね。
忌避物質や有毒物質を自らが作り出すことで、外部からの武装を行なう訳です。
しかしながら「美味しさ」を求めて、次々と品種改良が行われた結果、農作物は独自の忌避物質や有毒物質を持てなくなり無毒化されていきます。
例えば苦味成分のポリフェノールが従来の約1/10しか含まれていないこどもピーマンは、品種改良の結果、誕生した品種です。
品種改良を経て「不快な味がしない」「毒がない」農作物は、害虫や草食動物から身を守る術がなくなり、食べられやすくなります。
その農作物から外敵を守るのが「農薬」の役割です。
害虫も栄養価が高い畑や農作物が好き
充分な水や肥料を与えたり、一定の温度を保ったりなど、きちんとした管理で栽培された農作物は、私たち人間だけではなく、害虫にとっても、素晴らしい食べ物と言えます。
野生の植物よりも炭水化物やタンパク質などの栄養価が高い農作物があれば、当然、寄ってくる害虫も増えます。
農薬を使わないと作れない野菜・果物が多い
「美味しい農作物は人間だけではなく、害虫や病原菌も好むので、農薬は必要不可欠なものだ」と言われる一方で「無農薬野菜」「減農薬野菜」という言葉を良く聞きますね。
現実的に農作物の中には無農薬や従来の農薬量を減らしても、無事に栽培できる農作物も少なくありません。
ただし農作物によっては、農薬を使わないと害虫や病原菌に負けてしまい、栽培から収穫までできない場合も多いのです。
1991~1992年に行なわれた調査結果では、病害虫対策を行なわず一般的な栽培した農作物は収穫量が大幅に減少することが発表されています。
例えば、ももやリンゴの果樹は、ほぼ100%農薬を使わないと、収穫までたどり着けません。
下記の表を見ると、良く「無農薬栽培できる」言われる野菜は、推定収穫減少率のパーセンテージが少ないことに気付くと思います。
作物名 | 推定収穫減少率(平均)% |
---|---|
水稲(10) | 28 |
小麦(4) | 36 |
大豆(8) | 30 |
りんご(6) | 97 |
もも(1) | 100 |
キャベツ(10) | 63 |
だいこん(5) | 24 |
きゅうり(5) | 61 |
トマト(6) | 39 |
ばれいしょ(2) | 31 |
なす(1) | 21 |
とうもろこし(1) | 28 |
作物名右( )は試験例数(1991~1992年に実施)
社団法人日本植物防疫協会「農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫等の被害に関する調査」(1993年)
生産者の労働時間の短縮になる
戦後、科学技術の進歩により、様々な農薬や農耕機が生み出された結果、生産者の労働時間が非常に短縮されました。
雑草を抜く「除草」は、戦前は手取りが中心でしたが、戦後に除草剤が開発されたことで大きな時間短縮が図られました。
例えば10アールあたりの除草時間を見ると、1949年は50時間、50年後の1999年は約2時間と約1/25まで短縮されたことが分かります。同じく総労働時間も大幅に減っていますね。
現在、生産者の多くが「兼業農家」なのは、農業における総労働時間が減ったことも影響しているように思います。
最後に
美味しい農作物になるように品種改良を繰り返した結果、農作物は確実に病害虫に弱くなっており、それらを防ぐ対策が必要不可欠になってきました。
その一つが「農薬使用」だと言えます。
「本当に農薬を使わずに農業ができるのか?」に関しては、本当にケースバイケースだと思います。
私たちが農薬に関して考えることは「農薬が安全かどうか?」ではなく「化学農薬の使用回数や量を減らした栽培はできないのか?」「使用される農薬が、他の生態系を脅かしていないか?」など、より踏み込んだ部分にあると思います。
あわせて読みたい:
本当に健康を考えるなら有機野菜は買うな(本当は危ない有機野菜)

