日本で遺伝子組換え食品はどれだけ流通している?意外と知らない輸入品・加工品の秘密

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遺伝子組換え作物

私たちが普段買い物をしているときに「遺伝子組換えではない」と表示された食品を見かけます。

裏を返せば、遺伝子組換え作物を使用した食品は、日本でも流通しており、自分たちが食べている食品のなかには、遺伝子組換え作物が使われている可能性があると言うことです。

具体的にどのような遺伝子組換え農作物が国内外で商業的に生産されており、日本ではどのように流通、使用されているのか紹介します。

海外で実用化されている遺伝子組換え農作物

遺伝子組換えは「生産性の向上」と「農作物の成分や機能などの改変」の2種類の目的をもって行なわれています。

遺伝子組換え農作物には花木(バラやカーネーションなど)も含まれますが、今回は野菜や果物に絞って紹介します。

※下記の表は2012年にISAAA (国際アグリバイオ事業団)が発表した、各国で食品や飼料、栽培が承認されている農作物のデータに基づき作成しています。

現在はさらに多くの農作物が、遺伝子組換え農作物として実用化、商業栽培されている可能性があります。

生産性の向上

農作物 目的
トウモロコシ 病気に強い、除草剤体制、害虫抵抗性、乾燥耐性
トマト 病気に強い、害虫抵抗性
パパイヤ 病気に強い
ジャガイモ 病気に強い、除草剤体制、害虫抵抗性
プラム 病気に強い
ピーマン(甘唐辛子) 病気に強い
ペポカボチャ(スカッシュ) 病気に強い
インゲン豆 病気に強い
ダイズ(大豆) 除草剤耐性、害虫抵抗性
ワタ(綿) 除草剤耐性、害虫抵抗性
ナタネ(菜種) 除草剤耐性
アルファルファ 除草剤耐性
テンサイ(甜菜) 除草剤耐性
アマニ(亜麻仁) 除草剤耐性
イネ(稲) 除草剤耐性、害虫抵抗性
クリーピングベントグラス 除草剤耐性
コムギ(小麦) 除草剤耐性
ジャガイモ 除草剤耐性、害虫抵抗性
チコリ 除草剤耐性

上記のうち、これまでに商業栽培されているのは、トマト、ピーマン、ペポカボチャ、パパイヤ、大豆、トウモロコシ、ワタ、ナタネ、テンサイ、アルファルファです。

農作物の成分や機能などの改変

遺伝子組換え農作物 見出し2
トウモロコシ 有効成分高含有(高リシン、耐熱性αアミラーゼ)
ダイズ 有効成分高含有(高オレイン酸)
ナタネ 有効成分高含有(油含量改変)
ジャガイモ 有効成分高含有(デンプン組成の改変)
トマト 日持ちがする
メロン 日持ちがする

上記のうち、ジャガイモ、トマトについては、これまでに商業栽培がされています。

日本で承認されている遺伝子組換え農作物

遺伝子組換え作物

海外で実用化されている遺伝子組換え作物でも、日本で栽培や流通、加工、販売が承認されているのは大豆、トウモロコシ、セイヨウナタネ、綿、パパイヤ、アルファルファ、テンサイ、ジャガイモ、からしな、カーネーション、バラの11品目だけです。

現在、日本で商業栽培されている遺伝子組換え農作物青いバラ(サントリーフラワーズ)に限られています。

ちなみに同じく遺伝子組換え技術で誕生した青いカーネーションの「ムーンダスト」は、南米からの輸入品になり、日本での商業栽培はされていません。

そのため、日本で流通している遺伝子組換え農作物は輸入物に限定されていることがわかります。

野菜や果物に「国産」、「(都道府県名)産」の表記があれば、遺伝子組換え農作物の心配は要りません。

輸入物の遺伝子組換え食品はどれだけ流通している?

日本で輸入されている遺伝子組換え作物

日本で流通している遺伝子組換え食品は輸入品に限定されます。

輸入された遺伝子組換え食品のなかでも、使用用途は同じ食品と比較して限定されており、そのぶん、商品パッケージを見ただけではわからない形で使用されていることが多いです。

大豆

大豆と大豆製品

大豆の輸入先はアメリカが大半(シェア約73%)で、アメリカでの遺伝子組換え大豆の栽培面積は全体の94%です。

遺伝子組換え大豆のおもな使用用途は食用油(大豆油)で、大豆油はサラダ油や揚げ油、缶詰、レトルト食品などに使用されることが多いです。

大豆油は遺伝子組換えの表示義務がないので、原材料名「大豆油」だけが記載されている商品に関しては、遺伝子組換え大豆が使われている可能性があります。

またバターやショートニング、ドレッシング類になると「食用精製油脂」や「食用植物油脂」だけで、そもそも大豆油を使用しているかすらわかりません。

ほかにも表示義務がない大豆製品にしょう油もあります。 

商品としての「しょう油」に関しては「大豆:遺伝子組換えではありません」の任意表示があることが多く「国産大豆」とあれば遺伝子組換えの心配はありません。

ただし、しょう油が使われている食品(和風ドレッシング、麺類のスープ、お菓子など)になると、一気に表示がなくなります。

遺伝子組換え表示義務がある大豆製品(豆腐、油揚げ、高野豆腐、おから、ゆば、納豆、豆乳、みそ、煮豆、きなこなど)に関しては、遺伝子組換え大豆が使用されることはありませんが、それ以外には注意を払う必要があります。

トウモロコシ

トウモロコシ

トウモロコシの輸入量がもっとも多いのがアメリカ(シェア69%)で、遺伝子組換えトウモロコシの栽培面積は全体の95%前後を占めています。

遺伝子組換え食品の承認実績を見ると、トウモロコシのおもな用途としては、コーンスターチ、食用油(コーン油)、液糖、水あめが挙げられていますが、実際に使用されているおもな用途は液糖、水あめくらいです。

上記の加工品はすべて遺伝子組換えの有無に関する表示義務はありません。

コーン缶詰(スイートコーン、ホールコーン、クリームコーンなど)やポップコーン、コーン菓子など、よく見かけるトウモロコシ製品で遺伝子組換えトウモロコシを見かけることはなく「トウモロコシ:遺伝子組換えではない」としっかり記載されています。

ちなみに遺伝子組換え表示が不要な食品には、コーンフレーク(コーングリッツ)、コーンスターチ(トウモロコシでん粉)もありますが「トウモロコシ:遺伝子組換えではありません」の表記がある商品がほとんどです。

トウモロコシを使っているのがわかりやすい食品は、消費者の関心も高いので、遺伝子組換えトウモロコシは使用していないと考えられます。

一方で液糖、水あめになると、表示義務もなく、関心も低いので、遺伝子組換えトウモロコシが使われている可能性が高くなります。

遺伝子組換え食品の情報開示を積極的に行なっているイオンのトップバリュでも、商品によって「遺伝子組換え不分別」「遺伝子組換えではありません」が分かれています。

なたね

菜種・なたね油

セイヨウナタネはおもになたね油として食用油に使用されています。

日本でのなたね油の原料としてのセイヨウナタネの自給率は1%未満で、ほとんどがカナダからの輸入に依存している状態です。

カナダにおける遺伝子組換えセイヨウナタネの栽培面積は95%前後で、なたね油には遺伝子組換えの表示義務がないので、遺伝子組換えセイヨウナタネが使用されている可能性は否定できません。

サラダ油やキャノーラ油の原材料、揚げ物の揚げ油に使われる際は「食用なたね油」の表記がある場合も多いですが「なたね油:遺伝子組換え不分別(遺伝子組換えなたねが含まれる可能性があります)」くらいが限度です。

またドレッシング、マーガリン、ショートニングなどになると「食用植物油脂」や「食用植物油脂」だけで、そもそも何の油を使用しているかわかりません。

国産ナタネが原料ならば、商品名に「国産菜種油」など国産表記がされている場合がほとんどで、遺伝子組換えの心配はありません。

綿実

綿実

綿実(ワタの実)は、なたねと同じくおもに食用油の「綿実油」として、マーガリンやサラダ油の原料、缶詰(おもに魚)などに使われています。

綿実油には遺伝子組換えの表示義務がなく、原材料名に「綿実油」だけが記載されている場合は、遺伝子組換えの綿実が使われている可能性があります。

たとえば、イオンのPB「トップバリュ」には綿実油(綿実):遺伝子組換え不分別と表記されている商品がいくつかあります。

遺伝子組換え不分別とは、適切な分別生産流通管理がされておらず、遺伝子組換えが分別されていない農産物やそれを原材料とする加工食品のことで「遺伝子組換え農産物が混じっている可能性がある」と言えます。

日本への輸出の半数以上を占めるアメリカでは、遺伝子組換えワタの栽培面積は98%となっています。

パパイヤ

パパイヤ

日本でおもに流通しているパパイヤとしては、青パパイヤ(生)、パパイヤ(生)、ドライフルーツが挙げられます。

ほかにも缶詰、漬物、ジャム、ピューレ、ジュース、シャーベット、パパイヤ茶も表示義務の対象食品ですが、上記と比較すると見かける機会は限られています。

遺伝子組換えパパイヤとして広く認知されているのは、ハワイ産のパパイヤ(生)くらいです。

ハワイでは1990年代にパパイヤリングスポットウイルス(PRSV)により、パパイヤ栽培に大きな被害を受けたことで、PRSVへの耐性を持たせた「レインボー」種のパパイヤが主流になりました。

1998年に商業栽培が開始されて、日本では2011年に輸入が認められて、コストコで取り扱いがあった時期もあります。

ちなみに遺伝子組換え作物のなかで、始めて「生鮮」として流通されたのがパパイヤです。

パパイヤには国産(沖縄、鹿児島、宮崎など)やフィリピン産、タイ産も見かけますが、いずれも非遺伝子組換えなので「遺伝子組換えではない」の表示がなくても安心です。

またハワイ産のパパイヤでも「カポホ・ソロ種」や「サンライズ種」などの別品種は遺伝子組換えパパイヤではありません。

とは言え、以前、プリマハムが販売する「ロールキャベツ(タイ産)」で、巻くのに使われていたパパイヤの一部が「安全性未審査で日本では承認されていない遺伝子組換えパパイヤ」と判明した一件もあるので、絶対とは言い切れないのが実情です。

アルファルファ

アルファルファ

アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ、糸もやし)は、マメ科ウマゴヤシ属の植物です。

スーパーの野菜売り場のスプラウトコーナーで取り扱いがあったり、野菜ジュースで使用されたりします。

日本で出回るアルファルファは国産(岐阜県産など)がほとんどで、近年、遺伝子組換えアルファルファの輸入実績はありません。

テンサイ

テンサイ糖

テンサイ(甜菜、ビート、サトウダイコン)は、砂糖の原料として使われる野菜の一つです。

日本では北海道で栽培されており、日本で「てんさい糖」として流通している商品は北海道産と明記してあるのがほとんどです。

◆代表的なてんさい糖の商品

  • グラニュ糖(ズズラン印)
  • てんさい糖(ホクレン)
  • てんさいのお砂糖 (大東製糖)
  • 北海道てんさいオリゴ(加藤美蜂園)
  • 北海道産てんさい含蜜糖(ムソー)
  • ビート糖(てん菜糖)(山口製糖)

遺伝子組換えの表示義務があるのは「テンサイ」と「加工食品:てん菜(調理用)をおもな原料とするもの」です。

加工食品としてのテンサイには「てん菜の天ぷら」や「ビートチップス」が挙げられます。

上記の商品はおもに「北海道の食べ物」として販売されているので、遺伝子組換えの心配はありません。

一方で砂糖(てん菜をおもな原材料とするもの)に関しては表示義務がありません

輸入物のテンサイは砂糖の原料として使われるので、原材料名が「原料糖」や「砂糖」だけの商品は、遺伝子組換えのテンサイが使用されている可能性があります。

ちなみにイオンのPB「トップバリュ」など一部商品には「砂糖(てん菜):遺伝子組換えではない)」と明記されている場合もありますが、市販品で表示があるのは、かなり少ないです。

とはいえ、近年、遺伝子組換えテンサイの輸入実績はないので、あまり過度に気にすることはありません。

原材料名に「砂糖(北海道産)」や「てん菜(北海道)」「てんさい蜜糖(北海道)」などの記載があれば、国産のてん菜を使用していることがわかるので、遺伝子組換えの心配はないです。

ジャガイモ

ジャガイモ

遺伝子組換えの表示義務があるのは「農作物としてのジャガイモ」と「加工食品」です。

表示義務のある食品 おもな加工食品
冷凍ばれいしょ 冷凍フレンチフライドポテト、冷凍マッシュポテトなど
乾燥ばれいしょ 乾燥マッシュポテトの素など
ばれいしょでん粉 ばれいしょでん粉
上記のばれいしょを主な原材料とするもの 乾燥マッシュポテト:ベビーフード
ばれいしょでん粉:食品(お菓子、即席麺、冷凍食品)、調味料(片栗粉、ドレッシング)
ばれいしょ(調理用)をおもな原材料とするもの ポテトサラダなど

じゃがいもの食料自給率は2022年度(令和4年)で65%です。

野菜売り場で見かけるジャガイモは、ほぼ100%国産(産地は北海道が中心)です。

遺伝子組換え作物を使用しても、表示義務のないものにデキストリンが挙げられます。

デキストリンの原料に、じゃがいものばれいしょでん粉が使われることもありますが、ほとんどは「とうもろこし」です。

まとめ

遺伝子組換えの表示義務がなかったり、遺伝子組換えが分別されていない農産物や加工食品に関しては、遺伝子組換え農産物が使われている可能性があります。

また今回は触れませんでしたが、遺伝子組換え農産物を家畜の飼料として使用している場合も表示義務はありません。

「なるべく遺伝子組換えの疑いがある食品は食べたくない」と思うのであれば、遺伝子組換えに反対している食材宅配サービス(有機野菜系、生協)などを利用するのが最も確実です。

◆参考文献(一部)
遺伝子組換え農作物をめぐる国内外の状況
総合食料自給率(カロリー・生産額)、品目別自給率等 – 農林水産省(PDFファイル)
食料需給表 – 農林水産省
我が国への作物別主要輸出国と最大輸出国における栽培状況の推移(令和元年)

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