有機肥料と化学肥料の違いは?成分偽装は何が問題なのか

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有機肥料

野菜や果物、お米などの農産物を育てるのに欠かせないのが肥料です。

植物の生育に必要な養分には、三要素と微量要素があり、それらを肥料で補うことで生育を促進します。

三要素
チッソ、リン酸、カリウム
微量要素
カルシウム・マグネシウム・硫黄・マンガン・ホウ素・鉄・亜鉛・モリブデン・銅・塩素

肥料には大きく分けて有機肥料と化学肥料(無機肥料)の2種類があり、有機栽培で使用されるのが有機肥料です。

今回の記事では、有機肥料と化学肥料の特徴や、それぞれのメリット・デメリット、また有機肥料の成分偽装が起こると何が問題なのかを取り上げます。

有機肥料の種類と特徴

有機肥料の種類

有機肥料では、植物や動物の有機物を粉末状や発酵させた資材を、単体で使ったり(単一肥料)、混ぜ合わせて使ったり(複合肥料)しています。

資材にはさまざまな種類がありますが、今回は有機肥料で使用される代表的なものを紹介します。

植物油かす類

植物の種子(菜種や大豆、綿実、ごま、落花生、ひまわり、とうもろこし)や、米ぬかなどから油を絞って、残った油かすの総称が「植物油かす類」です。

植物の生育を促進するだけではなく、土壌の改善や土壌微生物を増やす役割も果たします。

そのなかでも、菜種油かすは、有機肥料の代表的な存在です。

植物の成長に欠かせないチッソ、リン酸、カリウムを多く含んでおり、植物の生育と相性が良いことから、昔からよく利用されています。

※植物油かす類は、植物かす粉末類(とうもろこしはい芽及びその粉末ほか)とともに植物質類と表示されることになりました。

草木灰

草木灰は草や木を燃やしてできる灰のことです。

リン酸やカリウムを多く含みます。

草木灰に含まれる石灰(アルカリ性)成分は、酸性の土壌を中和させる作用があるので、植物を植える前の元肥や土壌改良に使われます。

魚粉

魚粉は動物系有機質肥料の代表的な資材です。

イワシやニシン、雑魚などを加熱して、圧搾機で油と水分を取り除き、乾燥させて作ります。

比較的、即効性があり、土の種類問わず効果が期待でき、流出も少ないため、元肥と追肥の両方で活用されています。

また魚粉は作物の味を良くする効果があり、特に果樹園で重宝されています。

鶏糞

鶏糞は鶏やウズラなどのフンを、発酵・乾燥させたものです。

別名「加工家きん糞肥料」とも呼ばれます。

牛糞や豚糞よりも多くの養分を含むため、動物のフンではもっとも多く利用されています。

リン酸やカリウムのほかにも、カルシウムやマグネシウム、マンガンなどを含むため、植物の生育に適した肥料の一つです。

骨粉

骨粉は「骨」の性質上、リン酸を多く含みます。

効き目がおだやかで、長期的に効果が続くのも特徴的です。

骨粉には蒸製骨粉と脱膠骨粉、蒸製魚骨粉などがあります。

蒸製骨粉
牛や豚などの骨を砕いて、加圧加熱処理(蒸製)したあと、脂肪と大部分の「にかわ(ゼラチン)」を除いたもの
脱膠骨粉
蒸製骨粉からゼラチンを除いたもの
蒸製魚骨粉
大型魚(サメやマグロ)の骨を蒸製したもの。流通量は少ない

骨粉は、以前は「有機肥料の王様」と称されるほど、広く使われていました。

ただし、BSE(狂牛病)問題により海外からの輸入が禁止されたため、ほとんど見かけなくなりました。現在は農林水産省が定めた基準をクリアしたもののみが肥料として認められています。

化学肥料と有機肥料の違い

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化学肥料と有機肥料の違いとして、おもに原料、値段、生産量、効果が挙げられます。

原料:無機質と有機質

化学肥料は無機質の原料を化学的に合成して作られます。

無機質とは燃やしても水や二酸化酸素が発生しない物質のことです。

そのため、化学肥料は「無機質肥料」とも呼ばれます。

有機肥料は上記の「有機肥料の種類と特徴」でも説明したように、植物や動物の有機物を粉末状や発酵したものを原料に使用します。

生産量・価格:大量生産で安価・少量生産で割高

化学肥料は比較的、大量生産がしやすく、安価に供給ができます。

品質が安定しているので、貯蔵や輸送コストも安く済みます。

一方で有機肥料は、原料の加熱や粉砕、発酵などの加工処理に手間と時間がかかるため、生産量が少なく、値段も割高です。

効果:即効性と遅効性

化学肥料には植物に必要な養分が、バランス良く配合されており、吸収しやすい状態になっているので、即効性があります。

一方の有機肥料は、効き目はゆっくり穏やかですが、効果が長持ちするので、土壌改良や元肥として使われます。

また有機肥料を使うと、植物が土壌にある養分をより多く吸収しようと、根をすみずみまで張り巡らせるため、病気や害虫に強い植物が育ちます。

有機肥料の成分偽装は何が問題なのか

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2015年11月、JA全農(全国農業協同組合連合会)を通じて、東日本の11県で販売された水稲・野菜用の有機肥料の成分が、10年以上前から偽装されていたことが明らかになりました。

偽造されたのは有機原料の配合割合記載以外の原料の使用の2点です。

具体的には、

・有機成分が2.9%のはずが、実際は2.0%しか含まれていなかった。
・動物の皮を蒸して作った粉末状の有機肥料が、工場長の製造指示書に含まれていない。
・有機成分の不足分に化学肥料を充てていた。

などの問題が取り上げられています。

有機肥料の製造・販売は、どうしても単価が高くなることから、この偽装は「『コスト削減』を目的に行なわれた可能性が高い」としています。

有機肥料の成分偽装で、もっとも大きな問題なのが、成分偽装の有機肥料で作られた農産物が有機農産物や特別栽培農産物として販売できない可能性があることです。

成分偽装があると、国が認定する「有機農産物」や「特別栽培農産物」の基準を満たさなくなる可能性が高くなります。

  • 有機農産物:化学肥料を使わず育てた作物
  • 特別栽培農産物:節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下

実際に、農家の一部で成分偽装の有機肥料を使っていたお米を「有機米」や「特別栽培米」として販売することを一時休止・停止する措置が取られています。

参考記事:肥料偽装、10年以上前から 製造会社社長が謝罪

この事件を受けて「有機栽培」や「特別栽培」で販売していた商品の販売が一時停止されるなどの影響が出ました。

成分偽装を行なっていたのは、全国の肥料会社で売上高9位、秋田県ではトップシェアを誇っていた肥料メーカーなので、影響力も大きいです。

農業関係者だけではなく、消費者からは「何を信頼すれば良いか分からない」という戸惑いの声も上がっています。

私たちがスーパーで食材を選ぶ時「有機栽培だから」という基準で選ぶことが少なくありません。

ただ、単純に「有機」の言葉にとらわれず、自分が信頼できるお店や生産者から購入することが、今後より一層必要になってくると思います。

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