残留農薬は本当に危険?農薬が残る原因と食の安全性を考える
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残留農薬とは農作物(野菜や果物、米など)に残った農薬のことです。
ニュースなどで「一部の商品で残留農薬の数値が基準値を超えており、自主回収を行なっている」などと報じられていると、今食べている食品は大丈夫なのかと、不安になる方も多いと思います。
食の安全性を考える上で知っておきたい、残留農薬について分かりやすくまとめました。
この記事の目次
残留農薬とは
残留農薬とは「農薬を使用した結果、消失せずに農作物などに残った農薬」のことです。
農薬は、病害虫や雑草などを防除したり、農作物の成長を調整したりする目的で用いられます。
使用された農薬は、雨や風で飛散したり、日光や微生物によって分解されたりしますが、すぐには消失しません。
農薬の種類や散布される時期、回数は農作物ごとに異なりますが、残留農薬になるのは「収穫前に散布されて、消失せずにそのまま残った農薬」であることが多いです。
安全な範囲の農薬の残留基準は農作物で異なる
残留農薬が健康に悪影響を与えないよう、農薬を登録する際には安全性に関する残留基準と審査が設けられています。
残留基準は、農作物の種類ごとに設定されています。
(公益財団法人 日本食品化学研究振興財団では食品に残留する農薬等の限度量一覧表を公開しているので、くわしく知りたい人は参考にして下さい。)
その理由としては、以下が挙げられます。
- 残留濃度が同じでも、食事で「少量しか食べないもの」「大量に食べるもの」では、体内の摂取量が違う。
- 下ごしらえや調理方法によって、落とせる残留農薬の割合が異なる
残留基準を決定するには、多くの時間と費用がかかるため、多くの農作物には残留基準が設けられていません。
特に指定されていない農作物の残留基準(=一律基準)は0.01ppmです。
「ppm」は見慣れない単位だと思いますが 「parts per million、100万分の1」という意味です。
一律基準の0.01ppmとは「100トンの農作物に1gの農薬が含まれる」ことを示します。
そう考えるとかなり少ない値です。
基準値を超えて残留する食品の販売や輸入は禁止されています。
人々の健康を守るための指標として「1日摂取許容量、ADI(Acceptable Daily Intake)」があります。
1日摂取許容量とは「人が一生涯にわたって毎日摂取しても『健康上、悪影響が無い』と推定される化学物質(残留農薬。食品添加物)の最大摂取量」のことです。
私たちが農薬を摂取する経路としては、農作物だけでなく、空気や水から、ということも考えられます。
各農作物の残留農薬基準値は、1日に食べる野菜・果物から摂取する農薬の合計が、その農薬の1日摂取許容量の8割以内になるように設定されています。
現在、登録されている農薬は、ラベル表示された使用法を守っていれば、残留農薬が基準を超えて残ることで、健康上に被害を与える心配はありません。
基準値を超える理由とは
ただし、実際に農作物から基準値を超えた残留農薬が検出されることは起こります。
残留基準が定まっている農作物に農薬を使ったときに、同じ農薬が、別の農作物にもかかってしまった場合、後者の農作物が基準値超えになる可能性があります。
そもそも基準値の0.01ppmは、
・農薬が付着した手で農作物を触る
・散布器具に残った農薬が農作物にかかる
という程度でもNGになりやすい、ごく微量の濃度です。
それ以外にも「農薬の使用方法を誤っていた」というケースも多いです。
自分では正しく使っていたと思っていたのに、抜き打ち検査で基準値超えが発覚する、などという話は、よく聞きます。
そのような事態が発生した際は、安全性の判断とは関係なく、出荷が即時停止(自粛)されるため、私たちの手元に届くことはありませんので、安心してください。
普段食べるぶんには基準値以下
では私たちは普段、どれくらいの残留農薬を摂取しているのでしょうか?
厚生労働省では「食品中の残留農薬の一日摂取用検査結果」を毎年実施しています。
令和3年度の食品中の残留農薬等の一日摂取量調査では、48種類の農薬等について調査され、そのうち16種類が検出されました。
ただし、この量については「一生涯にわたって毎日摂取しても、健康に影響を与える恐れはない程度の量で、安全上の問題はないと考えられる」という報告がされています。
令和3年度 食品中の残留農薬等の一日摂取量調査結果 – 厚生労働省(PDF)
たまに「○○○から基準値の2倍以上の残留農薬が検出された」というニュースを聞きますが、農薬によって残留の基準値は異なります。
そのため「何の農薬がどの程度残留していたのか?」が分からないと、本当に危険性が高いかどうかの判断はできません。
また、基準値を大幅に超える残留農薬が検出された場合、ただちに出荷が停止されます。
そのため、健康を害するだけの残留農薬が付着した農作物を食べ続ける心配はありません。
ちなみにこの量は、1日許容摂取量は成人の平均体重を元に計算されているため、体重の軽い子どもには当てはまりません。
農薬の影響を考えて「子どもの健康を考えて減農薬や有機野菜を買う」という家庭も多いです。
農薬中毒の危険性は低い
農薬を多量に摂取すると、呼吸困難や吐き気、腹痛、麻痺などの神経症状が起こる「農薬中毒」になる可能性があります。
農薬中毒が起こるのは、農薬を製造したり、農作物に散布したりする場合であることが多いのですが、なかには残留農薬が原因になる場合もあります。
たとえば、農薬を使用した野菜や果物を食べたり、残留農薬が付いた農作物を飼料に使った家畜の肉や牛乳を摂取したりすると、知らないうちに体に農薬を取り入れることになります。
一度の摂取量が少なくても、毎日のように長期間摂取していれば毒性の影響を受けやすくなるのです。
これが「残留農薬は危険だ」と言われる理由の一つです。
ただし、現在使用されている農薬は水に溶けやすく、摂取しても尿として体外に排出されるので、残留農薬が体内に蓄積される可能性は「低い」です。
残留農薬は簡単に落とせる
検査結果からも分かるように、農作物から農薬が検出されても健康への影響はほとんどありません。
また農薬のなかでも病害虫を防除する殺虫剤や殺菌剤は、農作物の表面にしか散布されないので、残留農薬は農作物の表面に残りやすい性質があります。
そのため、水に溶けやすい農薬は、水洗い中に減り、皮をむけば農薬のほとんどを取り除くことができます。
一般家庭でも簡単にできる残留農薬の落とし方(下ごしらえ、料理方法)は以下の通りです。
- 外側の葉を取る
- 流水で振り洗いをする
- スポンジでこすり洗いをする
- 皮をむく
- 下ゆでをして茹でこぼす
- 酢や塩水に漬ける
また農薬の摂取を減らす方法として、栽培中に使用される農薬量が少ない、有機野菜や減農薬野菜を利用することも挙げられます。
ただし、普通に水やお湯で洗って、料理をするだけでも残留農薬は落ちます。
ですから、絶対に無農薬野菜を買わないと残留農薬が危険である、と神経質に思う必要はありません。
残留農薬の落とし方については、下記記事でくわしく解説しています。
あわせて読む:
自宅で簡単にできる野菜・果物の残留農薬を落とす7通りの方法
ポストハーベスト農薬との違い
残留農薬と一緒に問題視されやすい農薬に「ポストハーベスト農薬」があります。
ポストハーベスト農薬とは、収穫後に使用される殺菌剤や防カビ剤を指します。
おもに輸入野菜や果物の品質を保つ目的で使用されており、定義上は「食品添加物」です。
残留濃度は基準値以下で、1日摂取許容範囲内であれば、健康への影響はほとんどありません。
だだし栽培中に使用する農薬よりも濃度が強い薬剤を、散布したり浸けたりする分、残留農薬(=食品添加物量)は多くなりがちです。
残留農薬と同じく、水でよく洗ったり、外側の皮をむいたりすれば、ポストハーベスト農薬の摂取量を減らすことができます。
「たまに輸入野菜や果物を食べる」程度であれば問題ありませんが、食の安全性をより意識したい人は「ポストハーベスト農薬」に関しても知っておくとよいです。
詳しくは:実は輸入農産物は危険がいっぱい?ポストハーベスト農薬の問題とは
食の安全性についての心構え
農薬は農作物を栽培するのに欠かせない存在ですが、農作物を食べる人間の健康は無視できません。
厚生労働省は仮に毎日、残留農薬や食品添加物を摂取しても健康上に悪影響が出ないとされる1日の許容摂取量を定めています。
基本的に私たちの手元に届く食材は、残留農薬の心配がほとんどありません。
仮に農薬が付着していたとしても、普段の下ごしらえや料理で取り除かれてしまいます。
残留農薬の問題については「残留農薬が気になるから野菜や果物を食べない」のではなく「どうやって毎日の食事から農薬を減らせるか?」を考えることが大切です。
たとえば、有機や無農薬・減農薬栽培の野菜や果物は、一般的な食材と比較して、農薬の量や使用回数が少ないです。
また信頼できる生産者から購入するのも一つの方法です。
たとえば、有機野菜系の宅配サービスでは、取り扱う野菜や果物に対して、産地や生産者、どのような農薬を何回散布したかまで確認できます。
農薬や残留農薬の言葉だけで、何でも怖がるのではなく、農薬を使う理由や残留農薬の除去方法を知ることで、上手く付き合っていくことが大切です。
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