増粘安定剤(増粘剤、ゲル化剤、安定剤)を使う目的とは?キサンタン、ペクチン、グァーガムは危険性あり?
※記事内に広告を含む場合があります
当サイトは更新を終了しました。
長きにわたり当サイトを愛読、応援くださった方々には誠に感謝しております。
※この記事の内容は執筆時点のものです。サービス内容・料金など、現時点の最新情報とは異なる場合がございます。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
増粘安定剤とは、食品に粘り気をつけたり、滑らかさを出したりするために使われる食品添加物です。
別名として「糊料(こりょう)」とも呼ばれます。
食品や飲料を食べたり飲んだりしたときに、食感や喉ごしをよくする目的で使用されています。
たとえばドレッシング、ソース、焼肉のタレ、アイスクリーム、ゼリー、プリン、マヨネーズなど、いろいろな食品に幅広く使われています。
増粘安定剤は使い方(使用目的)によって「増粘剤」「ゲル化剤」「安定剤」「糊料」と区別されて表示されます。
そのため、同じ物質名を使用していても、原材料表示での用途名が異なる場合もあります。
増粘安定剤(ぞうねんあんていざい)の用途名
◆増粘剤
食品にとろみや粘り気をつける。少量でも高い粘性が特徴。
◆ゲル化剤
液体をゼリー状に固める(ゲル化)目的で使用する。
◆安定剤
粘性(粘り気)を高めて、固体や液体の食品成分を均一に安定させる。
商品の原材料表示には「増粘剤(キサンタンガム)」というように、用途と物質名が記載されます。
ちなみに既存添加物の増粘剤を2種類以上使用したときは「増粘多糖類」と呼ばれます。おもに食品の食感やとろみを調整するために使われます。
原材料表示は「増粘剤(増粘多糖類)」や「増粘多糖類」になります。「増粘」が増粘多糖類にも含まれているため、用途名が省略されることも多いです。
この記事の目次
増粘安定剤のおもな種類
増粘安定剤は物質によって「指定添加物」と「既存添加物」に分類されます。
◆指定添加物
安全性と有効性が確認されていて、国(厚生労働大臣)が「使用して良い」と指定した食品添加物のこと。
増粘安定剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、加工デンプンなどが代表的です。
◆既存添加物
日本で広く用いられていて、長年の使用実績がある食品添加物を指します。
キサンタンガム、グァーガム、ペクチンが代表的です。
CMC-Na、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムに関しては、食品以外の用途で使用されることも多いです。
そのため、どちらかと言えば以下のような用途で使われる印象の方が強いかもしれません。
◆カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)
植物繊維を成分とした水溶性の高分子です。
洗剤、歯磨き粉、陶芸などの糊剤、研磨剤など幅広い用途で使われます。
◆ポリアクリル酸ナトリウム
高吸水性高分子の一種で、大量の水分を吸収・保持できるのが特徴です。
食品添加物以外では、ローション、おむつ、生理用品、保冷剤など、吸収力・保水力が求められる製品に使われることが多いです。
◆アルギン酸ナトリウム
昆布やワカメなどの褐藻(かっそう)に含まれていて、海藻類のネバネバ、ヌルヌルのもとになる成分です。
胃粘膜保護用剤、紙のコーティング剤、人造イクラ、持ち運べる水などにも使われます。
加工デンプン
指定添加物には加工デンプンも含まれており、物質名としては以下の11品目が挙げられます。
- アセチル化アジピン酸架橋デンプン
- アセチル化リン酸架橋デンプン
- アセチル化酸化デンプン
- オクテニルコハク酸デンプンナトリウム
- 酢酸デンプン
- 酸化デンプン
- ヒドロキシプロピルデンプン
- ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン
- リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン
- リン酸化デンプン
- リン酸架橋デンプン
増粘安定剤以外にも「乳化剤」の用途でも使用されます。
上記の物質を含む食品や食品添加物は、原則、物質名の表記が必要です。
ただし、簡略名として「加工デンプン」や「加工でん粉」、「加工澱粉」も表記が可能なので、ほとんどは「増粘剤(加工デンプン)」の表記が用いられます。
参考資料:加工デンプンの表示について(PDFファイル) – 厚生労働省
キサンタンガム
キサンタンガムは、デンプンなどの糖類をキサントモナスにより発酵させたものです。
食品例:マヨネーズ、ドレッシング、タレ、ソース
成分はグルコース、マンノース、グルクロン酸など。
ほかの増粘安定剤と比較して、低濃度で高い粘性があり、食品中の酸や塩分の影響を受けにくく、熱にも強いです。
グァーガムやローカストビーンガムと併用することで、さらに増粘の効果が高まります。
摂取されたキサンタンガムは、体内で吸収されずに、ほとんどすべてが排出されます。
ちなみにキサンタンガムは食品用途以外では「手作りコスメ」をハンドメイドするときにも用いられます。ジェルやとろみのあるクリーム、乳液を作るときのベースになります。
ペクチン
ペクチンは、果実や野菜など多くの植物に含まれる物質です。
食品添加物としては、サトウダイコン(砂糖大根)、ひまわり、アマダイダイ(甘橙)、グレープフルーツ、ライム、みかん、リンゴから抽出されたものを使用しています。
食品例:ジャム、ゼリー、アイスクリーム
グァーガム
グァーガムは、マメ科グァーの種子の胚乳(種子が発芽するときの胚の養分になる)部分を粉砕したものです。
主成分はガラクトマンナンで、冷たい水によく溶けて、粘度が高いのが特徴です。
食品例:アイスクリーム、スープ、ドレッシング、タレ、即席めん
増粘安定剤の危険性はかなり低い
増粘安定剤は天然由来の多糖類を用いることが多いです。
ただし「天然」だから安心というわけではありませんが、増粘安定剤に用いられる物質は、JECFAよりADI(一日摂取許容量)は「特定しない」とされています。
JECFAとは、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議「FAO/WHO Joint Expert Committee on Food Additives」の略称で、添加物の安全性評価を行なっている機関です。
「特定しない」の評価は、極めて毒性の低い物質であることに限定されるので、増粘安定剤を含む食品を摂取しても危険性はかなり低いと言えます。
たとえば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)は、摂取した90%は未変化のまま排出、10%は腸内細菌によって分解されると考えられています。
ちなみに、キサンタンガムに関しては「軟便や下痢などの症状を引き起こす可能性がある」と指摘されているので、特にお腹の調子が良くないときは、キサンタンガム入りの食品は避けたほうが安心です。
増粘安定剤のおさらい
増粘安定剤(糊料)を使用する目的は「食品の粘り気やとろみを付けることで、食べたときの食感を良くする」ことにあります。
用途によって、原材料名では「増粘剤」「ゲル化剤」「安定剤」と表記されます。
おもにソース、ドレッシング、調味タレ、ゼリー、プリン、アイスクリーム、ジャム、即席めんなどに用いられます。
「液体を滑らかにトロッとさせたい」「食品を固めてプルプルな食感を作りたい」「食べたときのパサパサ感をなくしたい」という目的で使われます。
そのため、増粘安定剤が無添加だと、食べたときの食感が悪い、食材が固まらないなどのデメリットが出てきます。
外そうと思えばなくても大丈夫な保存料や着色料とは違い、加工食品を製造するには欠かせない食品添加物の一つです。
食品添加物の安全性としては、いずれの物質も「危険性は極めて低い」です。